児童養護施設、相次ぐ性犯罪 職員ら立場悪用 採用は現場任せの実状
西日本新聞 2019/6/18(火) 9:27配信
男子中学生にわいせつ容疑で元職員逮捕
児童養護施設の職員だった立場を利用し、入所する中学生にわいせつな行為をさせたとして、福岡県警は17日、児童福祉法違反(淫行させる行為)の疑いで、北九州市内の施設の元職員、秋田将嗣容疑者(43)=同市若松区畠田3丁目=を逮捕した。
逮捕容疑は3月8日午後10時半ごろ、福岡県内のホテルで、18歳未満と知りながら、施設に入所している男子中学生にわいせつな行為をさせた疑い。「ホテルには行ったが、わいせつな行為はしていない」と容疑を否認しているという。
県警によると、秋田容疑者は児童指導員として約7年間施設に勤め、入所する子どもの生活全般を指導する立場だった。施設側は、許可なく子どもを外泊させるなどの問題行動があるとして「児童への過剰な接触」で訓戒処分としたが、改善が見られないとして2月22日、諭旨退職処分にしていた。北九州市は17日、今回の事件を受けて施設の特別指導監査を始めた。職員らから事情を聴き、事実関係の把握に努めるという。
児童養護施設で相次ぐ性犯罪
さまざまな事情で親と過ごせない子どものよりどころである児童養護施設の職員らが立場を悪用した性犯罪が相次いでいる。里親などと違い、施設の職員採用には法律上、欠格事由は定められておらず「施設任せ」が実状。欧米では採用前に小児性愛者かどうかを確認する仕組みを設けた国もあり、専門家は「日本も採用段階のチェックを厳しくするべきだ」と指摘する。
男は強制わいせつなどの罪で懲役4年6月の実刑判決を受け、女児の1人は道に損害賠償を求めて提訴、その後和解した。佐賀県でも2016年、児童養護施設の元男性職員が施設内で男子児童の体を触るなどしたとして強制わいせつ罪で実刑判決を受けている。
児童養護施設は都道府県と政令市に認可と指導の権限があり、社会福祉法人が設置・運営する。福岡県によると、児童福祉法に基づく条例で人員配置や職員の資格は規定されているものの、採用に当たっての定めはないという。一方、里親やファミリーホーム職員は、禁錮以上の刑を受けた人や「児童の福祉に不適当な行為をした者」などは欠格事由とされている。
西南学院大の安部計彦教授(児童福祉)は「小児性愛などの性的指向を持つ人にとって施設が犯行しやすい場となっている可能性があり、不用心だ。採用で性的指向を確認する仕組みが必要」と指摘する。